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経済

東京電力の出口なき「業績不振」

2千万個人顧客「喪失」の危機

2021年8月号

「東電をどうするべきか……」
“1F”こと福島第一原発の過酷事故から十年が過ぎ、経済産業省の中枢は密かに東京電力ホールディングス(HD)の将来像の検討を始めた。
 同社は会長に三菱ケミカルHD会長・小林喜光を戴き、新体制が始動したものの、柏崎刈羽原発のテロ対策規定違反など不祥事の打撃は大きく、再稼働の時期は定まらない。低下するモラル、離脱する需要……、何より半世紀はかかる1Fの廃炉を完遂できるか―。十六兆円と見積もる事故債務は新たな再建計画でも変わらず、東電HDは返済に向けて毎年四千五百億円水準の利益を確保しなければならないが、二〇二〇年度の経常利益は前期比二八%減の一千八百九十八億円にとどまった。
 このままでは半永久的に公的管理が続くだろう。ある東電関係者は吐き捨てた。
「昨年度の大幅減益の元凶はひとえに販売子会社だ。経営陣は素人ばかりで、提携先にいいように喰い物にされている」
 事実、販売子会社の東京電力エナジーパートナー(EP)の経常利益はわずか六十・・・