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経済

「ESG物言う株主」が暴れ出す

日本企業はファンドの「カモ」に

2021年8月号

 投資銀行が今日、事業売却や買収のための営業文句として最も頻繁に使う用語は環境・社会・企業統治に配慮した投資を意味する概念である「ESG」だという。「このノンコア事業は切り出しましょう」などと言えば経営陣に気を悪くされるのがオチだ。「ESGの流れに逆行するような事業ポートフォリオは切り出しましょう。脱炭素化を考えてこの事業は売却しましょう」と言い換えれば、この時代、大企業は耳を傾けざるを得ない。このようにして上場企業が切り出すESGに背く事業の買い手となることをプライベート・エクイティ(PE)ファンドは虎視眈々と狙っている。
「少し前までは、日本企業も反ESG事業の便利な『買い手』として数えられていた」とある証券会社幹部は話す。
「セブン&アイ・ホールディングスによる米国のガソリンスタンド大手のスピードウェイ買収は、元の所有者のマラソン・ペトロリアムからすれば、時代の流れに逆行する事業の切り出しだった。M&Aがへたくそな日本企業に海外企業が高値で事業を売りつけようとするのは昔からだが、近年はESGのテーマでもそれが見られた。ただ、日本企業も機関投資家やメディアから脱・・・