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政治

《罪深きはこの官僚》伊藤 豊(金融庁監督局長)

三菱UFJに舐められた「銀行の番人」

2023年2月号

 昨年夏に金融庁が発表した「金融行政方針」では、仕組債についてこう言及している。
「苦情の状況等を踏まえると、真の顧客ニーズに基づく販売が行われているか懸念がある」
 顧客の要望を無視して強引に売りつけているという懸念だ。また、金融機関の経営者が仕組債販売の継続の是非を検討しているかをモニタリングするとまで踏み込んでいる。つまり、「このまま仕組債を売り続けるのか」という問いを金融機関に突きつけたのだ。
 通常の債券に金融派生商品(デリバティブ)を組み合わせた仕組債の説明はここでは措く。文字通り複雑な仕組みを素人が理解するのは難しく、損失のリスクも高い。なんの目新しさもない話だが、金融庁は改めて強い警告を発したのだ。メガバンク関係者は、「今回は意気込みが違った」と語る。
 旗振り役は長官の中島淳一だ。「長官肝煎り案件として、総合政策局が方針を決めている」(金融庁担当記者)という。銀行への直接的な締め付けを行うのは監督局で現在のトップは局長の伊藤豊だ。
 さすがに金融庁の本気度を汲み取った金融機関の対応は早かった。地銀などは相次いで仕組債の・・・

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