新生アメリカ合衆国の国土を倍増させ、欧州の列強に肩を並べる有力国家へのステップとなったルイジアナの購入は、一八〇三年に劇的に進展した。
　同年三月八日、第三代大統領トーマス・ジェファーソンの命を受けた大物政治家、ジェームズ・モンロー（のち第五代大統領）がフランスに向けて旅立った。
　四月七日―
　ナポレオンの兄ジョゼフと弟のリュシアンは、ルイジアナを売らないようナポレオンを説得しようと、テュイルリー宮殿に赴いた。
　二人は、アメリカ大陸の広大な領地を進んで放棄するのは馬鹿げていると考えていた。
　またジョゼフは、アメリカに強大な国家が誕生することを望まない英国から、十万ポンドの賄賂も申し出られていた。この英国のやり口は、東西ドイツの統一を何とか阻止しようとしたマーガレット・サッチャー元首相の動きを彷彿させる。
　しかし、ナポレオンの気持ちはすでに固まっていた。
　二人が宮殿に到着したとき、三十三歳の第一統領（政府のトップ）は入浴中だった。
「諸君、わたしはルイジアナをアメリカ人たちに売ることに決めた」{b・・・