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連載

金融の世紀

第16回【借金まみれの大英帝国とケインズ】
黒木 亮

2024年4月号

 1942年夏、英国のケインズと米財務次官補待遇のホワイトは、第二次大戦後の国際通貨制度に関する互いの案を示した。
 二つの案は、1930年代に起きたような為替相場の切り下げ競争を防止し、究極的に第三次世界大戦を防ごうという共通の目標を持っていたが、ケインズ案のほうが革命的で挑戦的だった。
 ケインズ案は、ナチスドイツの経済相フンクの考えを踏襲し、超国家的機関「国際清算同盟(The International Clearing Union=ICU)」を創設し、ICUによる多角的決済を通じて加盟各国の国際収支を均衡させるのが狙いで、①ICUが国際決済通貨「バンコール(Bancor)」を発行し、各国はICUにバンコール建て口座を開設し、加盟国間で貿易がなされるときは常にその口座を決済に使用する、②バンコールを全加盟国に配分し、各国通貨との交換レートは一定(固定相場)とする、③貿易赤字の国に貿易収支の均衡を促すため、当座貸越に一定の金利を課すとともに、為替レートを一定程度切り下げることを認める、④貿易黒字の国に対しては、バンコールの保有に上限を設け、それを超える場合、為替・・・

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