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社会・文化

欧米「認知症減少」はなぜ起きた

増加の日本が見習うべき対策

2025年7月号

 日本では認知症患者が急増中だ。二宮利治・九州大学大学院医学研究院教授(衛生・公衆衛生学)の研究によれば、2022年の高齢者(65歳以上)における認知症の有病率は12・3%で、35年には15・0%まで増加すると考えられている。だが世界では、先進国で患者は減っている。生活習慣病対策により、認知症克服の道筋が見えつつある。
 米デューク大学を中心とした研究チームが5月20日に『英国医師会誌』(BMJ)に発表した研究は興味深い。66歳以上の米国公的医療保険(メディケア)受給者約500万人を対象に、15~21年の認知症の発症率と有病率を分析した。この間、年間の発症率は3・5%から2・8%に低下した。この研究は、米国で認知症の新規発症がピークアウトした可能性を示唆している。
 22年11月には、米国のランド研究所が、『米国科学アカデミー紀要』に、「米国高齢者縦断調査」に登録された2万2442人の高齢者(65歳以上)のデータを分析した結果を発表した。認知症有病率は2000年の12・2%から16年は8・5%まで減少していた。この研究もデューク大学の研究も、人種間の格差は減少傾向を・・・

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