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連載

新・危機管理のノウハウ Vol.07

【ゼロトラスト】社員さえ信用してはならない
グロリア・グラウブマン

2025年10月号

 企業のリスク管理においてサイバーセキュリティ対策の重要度が日々高まっているのは議論の余地がない。特に人工知能(AI)の登場で環境が大きく変化している。
 筆者は米中央情報局(CIA)での勤務を経て政府職員となり、つい最近まで米国政府のサイバーセキュリティ当局者の職にあった。その後、日本政府のリスク対策に関連し政府機関や民間企業に助言などを行ってきた。日本の民間企業は欧米企業に比べると対応スピードが遅い。あまりに慎重過ぎ、新しいテクノロジーへの移行や理解にブレーキをかけているようだ。
 しかし、サイバー攻撃の脅威は待ってくれない。企業や政府を狙う攻撃者は、AIを活用して攻撃を巧妙化させている。たとえば、誰でも利用できるAIサービスで、フィッシングメールやスパムメッセージを作ることができ、あらゆる言語環境に対応するレベルにまで進化している。実際、上司からのメールを巧妙に装って、「これをクリックして」「この情報を送って」などと要求して、ウイルスに感染させようとしてくる。
 企業や政府機関は、適切なトレーニングを受けるなど最新状況を理解していなければ、知らないう・・・

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