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連載

皇室の風 第205話

横路孝弘の遺言Ⅴ
岩井克己

2025年10月号

 野党代議士ののち北海道知事を1983年から3期務めた横路孝弘は、国政に復帰して2005年から衆院副議長を、民主党への政権交代に伴い09年からは衆院議長を3年間務めた。
 最初の道知事選を密着取材した縁で、当選後すぐに道知事としては初めて発出した憲法記念日の知事談話の起草作業を内々に頼まれて手伝った思い出がある。また後年は皇室担当記者として、宮中で天皇・皇后(現上皇夫妻)と横路議長夫妻の動静を取材する巡り合わせとなった。議長公邸などに呼ばれ、皇太子の人格否定発言、雅子妃の精神疾患、皇位継承問題などを心配する横路に宮中の「奥」とりわけ東宮の悲劇的惨状を解説したこともあった。
 そうしたなかで、「象徴」として、また「議長」として、それぞれに自らの立ち位置と理念に絶えず日本国憲法を置き、あたかもそれを敗戦の焦土の泥濘から芽吹いたハスの花のごとく大切に思い、粘り強く育てていこうとする真摯な姿勢が印象に残っている。
 即位の際の「皆さんとともに日本国憲法を守り」務めを果たすと宣言した平成の天皇(現上皇)。由美子夫人とともに生協運動、ボランティア活動、市民運動など「市・・・

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