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社会・文化

アジアの交響楽団 「来日ラッシュ」の意義

変わりゆく音楽界の世界地図

2025年11月号

 ウィーン国立歌劇場を筆頭に、芸術の秋は欧米著名楽団の来日が目白押し。いつもながらのクラシック音楽界に、時ならぬアジアからのインバウンド旋風が吹き荒れた。秋分の日からスポーツの日頃までの約3週間、大邱、ソウル、台北、香港のオーケストラが次々来日。大阪・関西万博駆け込み参加でも国際音楽祭でもない。それぞれの楽団がそれぞれの思惑で訪れる日本楽旅である。
 アジア楽団来日ラッシュは、9月22日福岡シンフォニーホールの大邱市立交響楽団で幕を開けた。優等列車が停車する市には公立管弦楽団が整備される韓国。釜山からKTXで40分ほど、福岡空港からも直行便1時間の大邱は、韓国巨大財閥の一つサムスン発祥の地だ。市に寄贈された工場跡地はオペラハウスが聳える文化施設となり、軍事政権下の1964年に設立された市立楽団は、韓国最高の響きとされる大邱駅隣接のクラシック専用ホールで活動を続ける。
 今回の来日招聘は大阪のザ・シンフォニーホールによるもの。福岡と大阪公演は、大邱で毎年開催される「韓国大邱国際オーケストラ・フェスティバル」の海外版との位置付けだ。大邱市と姉妹都市の広島市では招待演奏会・・・

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