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社会・文化

大学院「無償化」は誰のためか

学生も研究も質が下がるだけ

2025年11月号

 高等教育の無償化が進むなかで、大学院の学費・入学金を免除する動きが地方大学で広がっている。大阪公立大学、兵庫県立大学など公立が中心で、地元に有用な人材を確保するのが狙いだ。人工知能(AI)など先端技術が研究開発だけでなく、企業経営にも不可欠となり、文系・理系を問わず大学院教育への期待も高まっている。だが、1990年代に文部科学省が進めた大学院重点化政策は定員を増やしただけで就職できない院卒が溢れ、学術研究にも企業経営にも貢献は薄かった。優れた学生は無償化ではなく、能力に見合った処遇を求めていることを大学側は知るべきだ。

「入りやすさ」だけが取り柄

 地方の名もない大学が大学院の入学金と授業料を無償化する勝負に打って出た。下関市立大学は2026年度から無償化を始める。同校は1962年創立で公立大としては長い歴史を持つが、学部は経済学部とデータサイエンス学部、看護学部だけの小規模校。大学院は経済学研究科のみで、2027年4月に地域サステナビリティ学研究科、データサイエンス学研究科を設置する。大学院に軸足があるわ・・・

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