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政治

高市「サナ推し」人気が反転する時

《政界スキャン》

2026年1月号

 高市早苗氏が自民党総裁になって3カ月。空虚に膨らんだ「サナエ人気」への戸惑いを抱えた年越しである。本人を含めて、この展開は予想外だろう。何しろ従来の政界の常識なら明らかな失言の数々が、「率直で分かりやすい」と好意的に支持され、新しいタイプの指導者が登場したように褒めそやされているのだから。
 2025年の新語・流行語大賞「働いて働いて働いて働いて働いてまいります」は、総裁選出の興奮に駆られたとはいえ、さすがに無神経すぎた。今なお過労死などの労災認定件数は年間1300件超(24年度)と過去最高だ。ところが受賞に対する遺族らの抗議は、「意欲の表明だから」「昭和世代は共感した」「もっと働きたい若者だっている」といった筋違いの異論に混ぜ返された。
 日中関係を悪化させた台湾有事発言も、「間違いではない」にせよ、それを首相が国会で発言するかは別問題だ。言いたいことを言えばいいなら政治家は要らない。サウジアラビアのムハンマド皇太子や北朝鮮の金正恩朝鮮労働党総書記の残忍な行状は周知の事実でも、あえて必要もなく「殺人者」とは呼ばない。戦略的な意図でもない限り、無用の摩擦は起こさな・・・

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