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社会・文化

在外公館「会食外交」最近事情

公邸料理人も深刻な「担い手不足」

2026年1月号

「腕のいい料理人を用意してくれ。そうすれば、会談で最高の合意を取り付けてみせよう」。19世紀に活躍したフランスの政治家、タレーランが遺した名言だ。外交の世界に美食はつきものだ。
 2026年1月から、長く日本外交を支えてきた公邸料理人の制度が変わる。外務省ホームページによると、新しい名称は「在外公館料理人」。従来の大使や総領事との私的契約から、在外公館との公的契約に切り替わる。任期も大使の任期と同じだったが、今後は原則2年契約で1年ごとの延長が可能になる。公邸への住み込みだったが、民間賃貸住宅に居住できるようにもなる。
 なぜ、制度を切り替えるのか。中央アジアの大使経験者A氏は「公邸料理人の給与が安すぎて、なり手が見つからないからだ」と説明する。従来は大使のポケットマネーで支払っていた。うち、外務省が6割から7割を補助した。公邸での業務としての会食づくりは外務省が、大使と家族の個人的な食事づくりは大使が、それぞれ対価を支払うという発想だった。ただ、大使の金銭負担には限界があるため、公邸料理人の月給は30万~40万円が相場だった。世界は和食ブーム。公邸料理人より、条件・・・

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