テイレシアスの食卓 vol.40
料理界でも難しい「引き際」
河井 健司
2026年7月号
「まあ、身体が動くうちはやっているかな」。6月のある日、ご来店いただいた熟練のパティシエに、いつまで今の仕事を続けるか、それとなく尋ねてみた。飄々とした面持ちから発せられたのは冒頭の言葉。2年前に還暦を迎えた今でも、引退は考えていないとのこと。この職人気質なご主人が、夫人と切り盛りする店舗は東京都立川市にある。都心から遠く、最寄りの駅からも離れた場所に店舗を構えているにもかかわらず、愛好家たちが通う名店として知られている。また、ご主人は、日本の洋菓子界を長らく牽引し、約3年前に他界した弓田亨氏の盟友でもある。
ただ、同じフランス菓子職人でありながら、その在り方は少々異なる。あるときから事業の拡大に舵を切った弓田氏は、各メディアに露出する機会が増えた。かたや、ご主人は現場を大事にする職人。タイプの違う二人ながらも、フランス菓子の本質を追求し、その技術を広める点において通じるところがあったようだ。日本の料理界で同志と呼べる存在が少ない筆者にとって、二人の関係性は羨ましい。
さて、事業の規模にかかわらず、オーナーシェフには定年がない。あとどのくらい厨房に立てるだろう、・・・
ただ、同じフランス菓子職人でありながら、その在り方は少々異なる。あるときから事業の拡大に舵を切った弓田氏は、各メディアに露出する機会が増えた。かたや、ご主人は現場を大事にする職人。タイプの違う二人ながらも、フランス菓子の本質を追求し、その技術を広める点において通じるところがあったようだ。日本の料理界で同志と呼べる存在が少ない筆者にとって、二人の関係性は羨ましい。
さて、事業の規模にかかわらず、オーナーシェフには定年がない。あとどのくらい厨房に立てるだろう、・・・









