本に遇う 第323話
破戒の淵に雨が降る
河谷 史夫
2026年11月号
この夏から秋へかけて降り続いた雨のなか、キリスト者ならずとも旧約聖書を読んだ人なら、創世記を思い出したかも知れない。
地上に悪がはびこるのを見たエホバの神は、地の上に人を造ったことを後悔し、「我四十日四十夜地に雨ふらしめ我造りたる萬有を地の面より拭去ん」と大洪水を起こす。ただ義人ノアと家族は、これを救うため方舟を造らせた。「雨四十日四十夜地に注げり」。
集中豪雨は新聞記者の命名で、大量の雨が降っている。線状降水帯の名付け親は知らないが、何のことだか分からなかった。それが東京で雨は37日間連続し、千葉には深刻な水害をもたらした。
雨の音を聞きながら、わたしはむかし読んだサマセット・モームの『雨』を思い出した。
南太平洋は赤道を越したサモア諸島。ツツイラ島の港町パゴパゴに間断なく降る雨の夜に、悲劇が出来する。巧みな語り口で人間性の不可解さを追究した小説家モームの傑作とされる。
パゴパゴに入った船は、麻疹発生で検疫のため出航禁止となり、乗客は足止めを食らう。イギリス人の宣教師夫妻と医師夫妻は、島にただ一軒の商人宿に泊まることになっ・・・
地上に悪がはびこるのを見たエホバの神は、地の上に人を造ったことを後悔し、「我四十日四十夜地に雨ふらしめ我造りたる萬有を地の面より拭去ん」と大洪水を起こす。ただ義人ノアと家族は、これを救うため方舟を造らせた。「雨四十日四十夜地に注げり」。
集中豪雨は新聞記者の命名で、大量の雨が降っている。線状降水帯の名付け親は知らないが、何のことだか分からなかった。それが東京で雨は37日間連続し、千葉には深刻な水害をもたらした。
雨の音を聞きながら、わたしはむかし読んだサマセット・モームの『雨』を思い出した。
南太平洋は赤道を越したサモア諸島。ツツイラ島の港町パゴパゴに間断なく降る雨の夜に、悲劇が出来する。巧みな語り口で人間性の不可解さを追究した小説家モームの傑作とされる。
パゴパゴに入った船は、麻疹発生で検疫のため出航禁止となり、乗客は足止めを食らう。イギリス人の宣教師夫妻と医師夫妻は、島にただ一軒の商人宿に泊まることになっ・・・









