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社会・文化

欠陥だらけの「検察審査会制度」

このままでは司法の「衆愚化」しかもたらさない

2010年4月号

「検察との闘いがこんなに続くとは……。でも、扉は開いたんです」
 兵庫県明石市で起きた花火大会事故の遺族の一人が、記者会見で口にしたこのメッセージが、マスコミを惑わしたのかもしれない。
 歩道橋から将棋倒しになって崩れ落ちてくる見物客の波に、二歳の次男がのみ込まれていくのを目の当たりにしたこの遺族。悔やみ切れない思いから他の多くの遺族を率い、四度不起訴になった警備責任者の明石署副署長(当時)の訴追を求め続けた。結果、神戸第二検察審査会は一月二十七日、業務上過失致死傷罪で起訴すべきとの二度目の「起訴相当」を議決。検察官以外の手によって初めて起訴が決まった瞬間を、マスコミが諸手を挙げて歓迎したのは無理もなかったのだろう。
 しかし、遺族のやりきれない想いは十分理解した上での疑問だが、議決の「核心部分」は果たして正しく伝えられたのだろうか。つぶさに見ると「検察官の基本的立場は被疑者が有罪か無罪かという点にあり、公益の代表者として起訴を担う」と当たり前のことを指摘した上で、「審査会の立場は検察官と同じではない」と言い切り、「市民感・・・