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経済

世界経済は「インフレ」に向かう

「市場」は織り込み始めている

2010年10月号

「リスク回避のしすぎだよ。グローバルなデフレシナリオは逆目が出ると思うよ。二〇一二年をどう読むかなんだ。一一年よりもね」
 サブプライム危機の頂点だったリーマンショックから二年。やれ日本の二の舞いだのと世界的な長期不況説が急に語られ始めたが、それは間違いで、悲観論はとんでもないという。ある大手ヘッジファンドのマネジャーの発言である。
 たしかにギリシャ危機以降、米国景気の二番底不安、中国の不動産バブル破裂と景気失速懸念などを根拠にした金融危機の再燃と、デレバレッジ(債務返済)が引き起こす長期不況説は定着したかに見える。キメ打ちは八月三十一日にフィナンシャル・タイムズ紙が紹介した人気経済学者ラインハート夫妻の「最悪は過ぎたと考える楽観論者に警告」というレポートだろう。過去七十五年間に起きた十五の経済危機を分析し、過度の債務の積み上がりの結果としての金融危機が、高い失業率、低成長とデフレ、資産価格低迷の長期化となると指摘した。
 しかし、ヘッジファンドの資産運用担当者は「市場が織り込み始めた『次』のシナリオを学者さんたちは分かっていない」という。

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