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連載

続・不養生のすすめ21

魚だけではボケは防げない
柴田 博

2012年9月号

 このコラムでも何回か指摘したが、欧米の研究結果を短絡的に日本人に当てはめようとする学者が後を絶たない。今これが、魚の摂取と認知症の予防の問題で起こっている。ことの発端は一九九七年のオランダの研究である。毎日魚を一八・五グラム以上摂っていたグループの認知症の発生率は同三グラム以下のグループの三分の一以下であったという研究結果が発表されたのである。

 一部の学者は、押っ取り刀でこの研究をいち早く喧伝し「日本人ももっと魚を食べるべきである」と主張し始めた。筆者も近年減少傾向にある魚をもう少し食した方がよいとする意見に反対ではない。しかし、それによって今より認知症が減ると考えるのは早計である。

 次頁の図は四カ国の一人一年あたりの動物性食品の供給量(消費量)を比較したものである。三年前、オランダのライデン大学主催の国際会議で筆者が報告したものだ。このデータは一人あたりの供給量なので、摂取量のみでなく廃棄された分も含まれている。わが国のように毎年食品の摂取量を定点観測している国は他にないので、国際比較の場合は供給量のデータを用いるしかない。
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