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「北朝鮮難民」大量流入に備えよ

周辺国より杜撰な日本の「想定と対策」

2017年5月号

 三月末に姿を消したはずの米原子力空母カールビンソンが四月下旬、再び朝鮮半島近海に現れた。米NBCテレビは「北朝鮮が六回目の核実験を実施すれば、米軍が北朝鮮を攻撃する準備を進めている」と報じた。北朝鮮国営メディアも繰り返し、「超強硬で立ち向かう」「核の宝剣がある」「先制攻撃は米軍の独占物ではない」と叫んでいる。四月十五日に平壌で行われた軍事パレードでは、新型の大陸間弾道ミサイル(ICBM)とみられるミサイルも公開された。
 実際に有事になれば、朝鮮半島全体は戦火に包まれ、深刻な混乱が起きるだろう。その一つが北朝鮮難民の発生だ。
 この問題に比較的早くから取り組んだのが日本政府だ。二〇〇〇年代初頭には、内閣官房が立ち上げた事態対処専門委員会による有事のシミュレーションの一つとして北朝鮮難民を扱った。
 だが、その中身は恐ろしく雑なものだった。衛星や航空写真などから北朝鮮の木造船舶の数を概算し、それに乗員を掛けて、「北朝鮮避難民の数は十万〜十五万人にのぼる」とはじき出した。そして、収容先としては長崎県大村にある大村入国管理センターだけでは足りないので、近隣の市・・・