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社会・文化

福島の「新利権」 巨大洋上風力発電

汚染水放出「地元懐柔策」の暗愚

2018年11月号


「二年後には浜通りの国道六号を聖火ランナーが走る。福島の復興を世界にアピールするのに、2Fがあったら興醒めだろ」
 振り返れば、首相官邸のこのひと言で、東京電力ホールディングスの"2F"こと福島第二原発の廃炉は決まった。しかも、「自民党総裁選前の廃炉表明」を指示され、東電の小早川智明社長は六月十四日、早々に福島県の内堀雅雄知事を訪れたのだ。これにより、事故を起こした"1F(福島第一原発)"と合わせ県内十基すべての原発が消滅する。それは県民の総意でもあるが、浜通り地域に雇用不安が燻るのも事実だ。
「福島県沖浮体式洋上風力発電事業」―。その不安に応えるように、にわかに大型の地域振興策が動き始めた。1Fと2Fの沖合十五~二十二キロの海域に八十基もの風車を設置し、一大ウィンドファームを建設する計画である。
 事業主体は、福島市の建設・不動産業者などが組織する財団法人「ふくしま未来研究会」(未来研)。計画によれば、八十基の発電出力は四十七万キロワット、固定価格買取制度(FIT)による二十年間の売電収入を約一兆円と弾き、このうち四%の約四百億円を地元へ還元・・・