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連載

新大学評判記 第3話

鳥取大学医学部 「田舎」駅弁大学の生き残り戦略

2020年3月号

 鳥取大学医学部附属病院の広報誌「カニジル」の名前の由来は「医療をい『かに知る』か」と「地元の名物『かにのだし汁』」だ。前者は情報発信とコミュニケーション、後者は地元密着の意味を込めている。医療の世界でも東京一極集中が進む中、鳥大医学部は、カニジルに込めた二つの戦略を柱に生き残りをかける。
 鳥大医学部が力を入れる「ヒューマン・コミュニケーション教育」。この教育で中心となるのは実際の学生と人との交流である。具体的には、一年次は講義で発達心理学・臨床心理学を学んだ後に保育園での実習を行い、こどもと交流する。二年次は老年心理学の学習後に老人福祉施設実習を行っており、施設側からの評価も高いという。学生は乳幼児や高齢者と触れ合い、共感に基づいて他者との関係性を築く能力を獲得する。その中でコミュニケーションはもちろん、それを担う自分を見つめなおす「気づき(アウェアネス)の体験学習」として、一定の成果を上げてきた。
 鳥大医学部をはじめとした国立大医学部に入学する学生は、「周りは全員敵」という無味乾燥な受験戦争に勝ち抜いてきた。このため、その過程で、「コミュニケーション能力」が・・・