『新幹線大爆破』半世紀ぶり改作に想う
日本社会の耐えがたい空疎感
2025年7月号
「俺たちは見苦しい、みっともない、どうしようもない生き物だから、この仕事を始めたんじゃなかったのか!」
昭和50年(1975年)公開の東映映画『新幹線大爆破』―。高倉健演じる、倒産した町工場の経営者・沖田哲男ら3人の男が、新幹線に爆弾を仕掛け、その撤去方法と引き換えに政府から500万㌦(当時15億円)の現金強奪を謀る物語は、中盤にこんな台詞がある。
計画を躊躇する沖田に、新左翼活動家の古賀勝(山本圭)が絶望と希望を訴え、決行を促すシーンだ。新幹線は国家そのものであり、台詞は国家と個人の抜き差しならない相剋、まさしく近代社会のアポリア(難題)を象徴する。公開から50年が経ち、出演者の大半は鬼籍に入ったが、ネット空間では今、リメイク作品が話題を呼んでいる。
動画配信サイト「ネットフリックス」が制作した2025年版『新幹線大爆破』である。最新CGを駆使し、JR東日本の全面協力を得て撮影された新作は躍動的だ。しかし、旧作の画面一杯にみなぎっていた熱量が感じられない。パソコンディスプレイに動く空疎な紙芝居なのだ。それはなぜか……。{・・・
昭和50年(1975年)公開の東映映画『新幹線大爆破』―。高倉健演じる、倒産した町工場の経営者・沖田哲男ら3人の男が、新幹線に爆弾を仕掛け、その撤去方法と引き換えに政府から500万㌦(当時15億円)の現金強奪を謀る物語は、中盤にこんな台詞がある。
計画を躊躇する沖田に、新左翼活動家の古賀勝(山本圭)が絶望と希望を訴え、決行を促すシーンだ。新幹線は国家そのものであり、台詞は国家と個人の抜き差しならない相剋、まさしく近代社会のアポリア(難題)を象徴する。公開から50年が経ち、出演者の大半は鬼籍に入ったが、ネット空間では今、リメイク作品が話題を呼んでいる。
動画配信サイト「ネットフリックス」が制作した2025年版『新幹線大爆破』である。最新CGを駆使し、JR東日本の全面協力を得て撮影された新作は躍動的だ。しかし、旧作の画面一杯にみなぎっていた熱量が感じられない。パソコンディスプレイに動く空疎な紙芝居なのだ。それはなぜか……。{・・・