三万人のための情報誌 選択出版

書店では手に入らない、月刊総合情報誌会員だけが読める月刊総合情報誌

連載

金融の世紀

第31 回【第4次中東戦争とオイルマネー】
黒木 亮

2025年7月号

 1973年10月6日土曜日は、ユダヤ教で最も厳粛かつ神聖なヨム・キプル(贖罪の日)が始まる日だった。イスラエルでは黙想、内省、魂の模索、祈りのため、国中の活動が止まっていた。
 午後2時、エジプトのアンワル・サダト大統領の計略で、1週間前から演習と称し、スエズ運河付近に10万人の軍隊、1350両の戦車、2千門の大砲・重迫撃砲を集結させていたエジプト軍の200機以上の航空機が、太陽がかっと照り付ける雲一つない青空へと飛び立ち、第3次中東戦争(1967年)で奪われたシナイ半島にあるイスラエル軍基地への大規模な空爆を開始した。
 同時刻、2年前までエジプトとアラブ連合共和国をつくっていたシリアが、ハーフェズ・アル・アサド大統領の指揮下、やはり第3次中東戦争で奪われたゴラン高原に展開するイスラエル軍の2個機甲旅団、1個歩兵旅団、2個空挺大隊などに対し、2万8千人の兵力、800両の戦車、600門の火砲で攻撃を開始した。
 南と北からイスラエルを挟み撃ちにする奇襲攻撃によって、第4次中東戦争の火蓋が切られた。
 サウジアラビア、ヨルダン、イラク、モロッコ、・・・

この記事を読んだ人はこんな記事も読んでいます