本に遇う 第307話
冤罪の種子は尽きず
河谷 史夫
2025年7月号
〈石川や浜の真砂は尽きるとも世に盗人の種子は尽くまじ〉とは、京都三条河原で釜茹でにされた石川五右衛門辞世の歌というが、これをもじれば〈この国で裁判沙汰のある限り世に冤罪の種子は尽くまじ〉となろうか。
起訴後の有罪率が99%という日本で、冤罪事件が後を絶たない。半世紀以上も前に逮捕、起訴された袴田巌さんの無罪が去年やっと、静岡県警刑事部による証拠捏造を断定して確定したと思ったら、今年は警視庁公安部がでっち上げた大川原化工機事件の損害賠償請求訴訟で、警察、検察の捜査は違法だったとする東京高裁の判決が確定した。
身に覚えのない嫌疑で犯人扱いされ、どんなに弁解しても聞いてもらえずに有罪、それも死刑判決―などということは想像するだに身の毛がよだつことである。袴田さんが58年間拘束されていた間に精神に異常をきたしたというのももっともと思われる。
死刑囚が再審無罪となった嚆矢は、1983年確定の免田事件であった。35年間濡れ衣を着せられた免田栄さんの膨大な獄中書簡や事件と公判の記録などを集めた『検証・免田事件[資料集]』を読むと、「間違われた男」の被った理不尽さが・・・
起訴後の有罪率が99%という日本で、冤罪事件が後を絶たない。半世紀以上も前に逮捕、起訴された袴田巌さんの無罪が去年やっと、静岡県警刑事部による証拠捏造を断定して確定したと思ったら、今年は警視庁公安部がでっち上げた大川原化工機事件の損害賠償請求訴訟で、警察、検察の捜査は違法だったとする東京高裁の判決が確定した。
身に覚えのない嫌疑で犯人扱いされ、どんなに弁解しても聞いてもらえずに有罪、それも死刑判決―などということは想像するだに身の毛がよだつことである。袴田さんが58年間拘束されていた間に精神に異常をきたしたというのももっともと思われる。
死刑囚が再審無罪となった嚆矢は、1983年確定の免田事件であった。35年間濡れ衣を着せられた免田栄さんの膨大な獄中書簡や事件と公判の記録などを集めた『検証・免田事件[資料集]』を読むと、「間違われた男」の被った理不尽さが・・・