本に遇う 第310話
居残り横行の時代に
河谷 史夫
2025年10月号
「上は来ず」という。
「上は来ず、中は昼来て昼帰り、下は夜来て朝帰り、下下が居続け、そのまた下下が居残りをする」
と、古今亭志ん朝が『居残り佐平次』のまくらで披露するのは、廓遊びの区分である。
「で、上というのはどういう遊びなんだろうと思ってうかがってみましたらば、あの、廓へ足を踏み入れない、まず遊びに出かけない…、まず遊びに出かけない…、これが一番上の部類だそうです」
「北」の吉原に対して「南」と呼ばれた品川の遊郭に、仲間と上がった佐平次が一晩さんざ遊んだあと連れを帰し、一人居続けるという噺だ。実はこいつ、吉原や千住で「居残り」を稼業にする男だったと最後に明かされる。
奇才監督川島雄三が『居残り佐平次』に『お見立て』『芝浜』『品川心中』といった落語を混ぜ合わせて撮った『幕末太陽傳』(1957年)は傑作だった。あれで佐平次に扮したフランキー堺一世一代の軽妙な演技は忘れ難い。
「下下の、そのまた下下」の居残りだから、当初は唾棄されるように扱われていたのが、目端がきいて、腰が軽くて骨身惜しまず動くの・・・
「上は来ず、中は昼来て昼帰り、下は夜来て朝帰り、下下が居続け、そのまた下下が居残りをする」
と、古今亭志ん朝が『居残り佐平次』のまくらで披露するのは、廓遊びの区分である。
「で、上というのはどういう遊びなんだろうと思ってうかがってみましたらば、あの、廓へ足を踏み入れない、まず遊びに出かけない…、まず遊びに出かけない…、これが一番上の部類だそうです」
「北」の吉原に対して「南」と呼ばれた品川の遊郭に、仲間と上がった佐平次が一晩さんざ遊んだあと連れを帰し、一人居続けるという噺だ。実はこいつ、吉原や千住で「居残り」を稼業にする男だったと最後に明かされる。
奇才監督川島雄三が『居残り佐平次』に『お見立て』『芝浜』『品川心中』といった落語を混ぜ合わせて撮った『幕末太陽傳』(1957年)は傑作だった。あれで佐平次に扮したフランキー堺一世一代の軽妙な演技は忘れ難い。
「下下の、そのまた下下」の居残りだから、当初は唾棄されるように扱われていたのが、目端がきいて、腰が軽くて骨身惜しまず動くの・・・