「ノーベル賞礼賛」が招く災厄
日本の免疫学が抱えた「致命的問題」
2025年11月号
日本人としては6人目となるノーベル生理学・医学賞を受賞した坂口志文・大阪大学特任教授。評価されたのは1995年に発表した制御性T細胞(Treg)の発見と、その作用機序の解明だ。全国紙5紙はいずれも一面トップで快挙を報じ、日本の免疫学の成果を称えた。だが世界的に権威のある英『ネイチャー』誌は辛口の論評を載せている。日本の免疫学は、実のところ課題山積なのだ。
通常、自分の身を守るように働く免疫は体内に侵入した病原体を攻撃する。過剰に働くと自己の組織も攻撃し、自己免疫疾患を引き起こす。Tregは、この免疫応答を抑える役割をもつリンパ球の一種で、暴走を抑える「ブレーキ」として機能する。転写因子FOXP3を発現することが特徴で、ウイルスや細菌の侵入から守るために起こる反応である免疫寛容の維持に不可欠な細胞である。
坂口氏の発見により、Tregの制御を通じて、関節リウマチなど自己免疫疾患、花粉症などのアレルギー、さらにがんや臓器移植後の免疫合併症の治療の可能性が拓かれた。
坂口氏は1976年に京都大学医学部を卒業した医師である。米国留学などを経て、99年に京都・・・
通常、自分の身を守るように働く免疫は体内に侵入した病原体を攻撃する。過剰に働くと自己の組織も攻撃し、自己免疫疾患を引き起こす。Tregは、この免疫応答を抑える役割をもつリンパ球の一種で、暴走を抑える「ブレーキ」として機能する。転写因子FOXP3を発現することが特徴で、ウイルスや細菌の侵入から守るために起こる反応である免疫寛容の維持に不可欠な細胞である。
坂口氏の発見により、Tregの制御を通じて、関節リウマチなど自己免疫疾患、花粉症などのアレルギー、さらにがんや臓器移植後の免疫合併症の治療の可能性が拓かれた。
坂口氏は1976年に京都大学医学部を卒業した医師である。米国留学などを経て、99年に京都・・・









