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社会・文化

《日本のサンクチュアリ》男女「産み分け」

「アングラ医療」が蔓延る日本

2025年11月号

 光と影が交錯する時、どちらか一方だけに意識が集中すると事の本質を見失う。生殖医療の進歩による「産み分け」も、命の選別や社会的格差の拡大への懸念ばかり強調すれば、少子化時代に出産増をもたらす可能性という視点は出てこない。最大の問題は、バランスある議論の前提となる実態の把握と情報共有が、厚生労働省や日本産科婦人科学会(日産婦)のエゴで妨げられている点にある。
 男女の産み分けへの関心は古くから強く、日本でも雑誌などで排卵日前後の性交のタイミング、ミネラル摂取、さらには産み分け用ゼリーの使用といった民間療法的な処方が、科学的根拠が乏しいにもかかわらず、繰り返し取り上げられてきた。
 いわば神頼みだった産み分けを現実のものに変えたのは、着床前診断の発達だ。おおっぴらには語られないものの、日本でも水面下で高精度の産み分けが静かに普及しつつある。
 東京都内の大学病院に勤務する産婦人科医は「産み分けは日常的に行われている。切実に望むカップルがいて、違法でもないからだ」と証言する。
 この医師には、不妊治療で有名なクリニックで研修医として経験した忘れられない・・・

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