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目に余るKDDIの「惨状」「小野寺長期政権」の弊害

 KDDIの低迷が続いている。固定電話事業では赤字が止まらず、それを補?してきた携帯電話事業も縮小均衡の運命を打開できず、ずるずると沈み行く現状に自覚さえない。その最大の戦犯として、社内で絶対的な権力を握る小野寺正社長兼会長への批判が高まっている。
 
「どうも在任十年をまっとうしたあとは院政を敷くつもりのようだ」-。小野寺社長は今年六月で社長就任八年目を迎えた。年齢はまだ六十一歳だが、通信業界ではもちろん、最近の産業界ではほかに例の少ない長期政権である。この間、組織は硬直化し、ワンマン社長にモノを言える人物はいなくなっている。

 小野寺社長を裸の王様にしているのは、経営企画部門を中心とする長老格の幹部連だという。「なんとかして社長に花道を」-。小野寺氏は二〇〇七年、中期経営計画「チャレンジ2010」で同社の連結売上高四兆円、営業利益六千億円の公約を掲げた。今年五月の決算記者会見でこの目標は難しいとして自ら取り下げた経緯があるが、社長を補佐する長老役員はまだあきらめていないという。同社から企業買収の仲介を依頼されている投資銀行関係者は「業態はどんなものでもかまわず、とにかく売上高をかさ上げしたがっているようだ」と話す。同関係者は、「彼らはM&Aを実現させて、社長の歓心を買えればいいと考えている。後に残った赤字の尻拭いをするのは若手社員だ」と話す。
 
表向きは競争をアピール

 長期の独裁体制に根を持つKD?DIの堕落。それは表向きコンペティター(競争相手)を装いながら、裏ではNTTとの疑似カルテルともいえるような密約を持ちかける狡猾な小野寺氏の「二枚舌」外交に最も端的に表れている。
 
 七月二十三日、KDDIが都内で開いた〇九年四?六月期決算発表の席上で、小野寺社長は報道各社に延々と説教を垂れた。「マスコミはもっと勉強してほしい。N?TTの光回線のボトルネックこそが問題なのであり、それが携帯電話の料金高止まりの原因にさえなりうるのだ」。
 
 この日の会見では四?六月期の同社の業績もそこそこに、NTTの組織問題や携帯の接続料に話題が集中した。小野寺社長の逆鱗に触れたのは、総務省で議論が始まった「携帯電話会社同士の接続料金引き下げ」に関連した、携帯料金はもっと下がる余地があるのではないかとの質問だった。
 
 あるKDDI元役員は「携帯が競争状態にあるなどと欺瞞もはなはだしい」と指摘する。同社の四?六月期の連結決算は、営業利益が前年同期比一四%増の一千四百十八億円と第1四半期で過去最高を更新した。利益面を押し上げた主な要因は、端末販売の不振に伴う販売手数料の減少だ。この間の販売手数料総額は九百億円と前年同期に比べ三割前後減少。端末が売れなければ売れないほど儲かるという、いびつな通信ビジネスのうまみを見せ付けた格好だ。
 
 それでは小野寺社長が問題だとする固定通信=光回線では、KD?DIはNTTに対抗する健全なコンペティターなのか。答えは否。小野寺氏は、表面ではNTTへの対抗を謳いながら、裏ではカルテルまがいの談合をNTTに持ちかけているという堕落ぶりだ。
 
 KDDIは〇七年に東京電力、〇八年に中部電力から光ファイバー事業と光通信サービス会社を相次いで買収。いずれも加入者宅へのアクセス回線を獲得し、 NTTへ対抗姿勢を見せた。その一方で、NTTに光回線を安く卸売りさせるための追及の手も緩めなかった。NTTが卸値下げに応じないと見るや、「リスクを払って自前の光を整備したが、これ以上の展開ができないのはNTTへの規制が弱いからだ」と矛先を規制当局へ向ける勇敢さも見せ、表向きコンペティターとしての姿勢をアピールした。
 
 ちなみに今年はNTTが持ち株会社傘下に東西地域会社と長距離国際会社をぶら下げた一九九九年の再編から十周年。来年からはNTTの組織見直しが議論される予定になっているが、KDDIはわざわざ七月と八月の二回にわたって報道各社向けの説明会を開催。いかにNTTが独占事業体のまま温存されているかを訴え、競争者の立場を強調してはいる。
 
NTTに持ちかけた密約

 しかし一方で、小野寺社長は奇妙な動きを見せている。
 七月、小野寺社長や側近幹部は総務省やNTT幹部との間で頻繁に会合を持ったという。ある総務官僚は「小野寺氏はもともと総務省に独自のパイプを持つが、これまではライバルNTTの情報収集が主。今回は大臣や次官、NTT最高首脳と直接接触している」と話す。この総務官僚によると、小野寺社長がこの総務省幹部やNT?Tに密かに持ちかけている構想があるという。「東京や名古屋、大阪など、光回線を自前で敷いても採算の取れる人口密集地ではNT?Tも KDDIも自前の回線を敷く。一方で採算の取れない郊外や地方ではNTTがすでに敷設した光回線を他事業者に開放する」というアイデアだ。
 
 この案がうまく考えられているのは、KDDIにとってもNTTにとっても「悪くない話」である点。NTTにしてみれば需要が大きい都市部で光を安く開放すればダメージを受けるが、地方だけなら話に乗れる。KDDIは地方で莫大な費用をかけて回線を敷かずともNTTの回線でサービスを提供することで名前だけでも「全国サービス」を名乗ることができる。一方、都市部では多少の赤字をたれ流しながら自前の回線を整備するが、NTTと同様、他社への開放義務を持たずにすむ疑似カルテルもでき上がる。
 
 この構想が実現すれば、ソフトバンクなどの競合他社は都市部では実質上サービス参入ができなくなる。NTTとKDDIによる巧妙な「相互不可侵条約」と言い換えてもいい。両社にとってみれば、ソフトバンクがADSL事業「ヤフーBB」でしたような人海戦術と低価格戦略による光回線の価格破壊が進むのがもっとも怖いのだ。
 
 こうした小野寺氏のダブルスタンダード的な動きに対し、社内で異を唱える勇気のある人材はないに等しい。〇一年六月に五十三歳で就任した小野寺社長は就任三年目には携帯電話事業の快進撃を背景に、牛尾治朗会長以下、奥山雄材副会長、五十嵐三津雄副社長(いずれも当時)ら、一回りも年齢の違う「新電電の巨人」らを隠居させ、実質上の独裁体制が続いている。
 
 NTT独占に風穴を開けるべく、大同団結によって発足したKDD?Iだが、通信自由化の旗手として期待を集めたのも今は昔。NTTとの野合も厭わない小野寺社長の「二枚舌」に象徴される堕落したKDDIに、かつての輝きはない。それどころか、彼らによって通信業界から「競争」という文字はいよいよ消え去ろうとしている。


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