巻頭インタビュー

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「少子化対策」はあと五年が勝負佐藤 博樹(東京大学社会科学研究所教授)
2009年7月号 連載〈巻頭インタビュー〉

 ---「少子化」傾向が一向に止まらないのはなぜですか。

 佐藤 政府の検討会などで「何をやるべきか」という少子化対策のメニューはほぼ出尽くしている。保育サービス、育児休業など両立支援制度、ワーク・ライフ・バランスを実現できる働き方、経済的支援などだ。しかしこれらのすべてについて十分な取り組みが行われているわけではない。保育サービスなどがその典型だ。施策を実行するだけの予算が付いていないことによる。予算が付かない背景には少子化対策の必要性が国民的な合意となっていないことがある。また、働き方の改革が遅れており、就業継続と子育ての両立が難しく、女性が結婚や出産をあきらめる事態もある。さらに、これまでの少子化対策は、結婚したカップルを対象としたもので、少子化の最大の要因である未婚化・晩婚化への対応策は議論されてこなかった。未婚化や晩婚化に関しては、ほとんど取り組みがない領域だ。

 ---国の不作為が原因と......。

 佐藤 結婚したい若者が結婚でき、子供を持ちたいカップルが子供を持てる社会を実現することは、実はごく普通の社会を目指すことだ。他方、若者の多くは結婚を希望し、結婚したカップルは子どもを持つことを希望している。つまり、少子化の進展は、国民が望んで選択した結果ではないのである。国民の結婚、出産、子育てに関する希望の実現を阻害している要因を取り除くことが、政府として取り組むべき少子化対策となる。

 ---なぜ国民の合意が得られないのですか。

 佐藤 結婚や子育てなど、今の若者を取り巻く社会環境が大きく変化したということを、政治家を含めて親の世代がまったく理解していないためだ。たとえば、一九八〇年代半ばまでは職場は男女の出会いの場だった。また地域にはインフォーマルに出会いをアレンジする人がいた。しかし、職場や地域の出会いのサポート機能が衰退した。出産や子育てについても大きく社会環境が変わった。

 ---そうすると、早晩の合意形成は難しいということですね。

 佐藤 諦めてはいけないが、国の少子化対策はあと五年が勝負だろう。それを過ぎると、いわゆる「団塊の世代ジュニア」の層が結婚・出産の適齢期から外れてしまう。この間に歯止めをかけられなければ日本の少子化の流れはもう止められない。ギリギリのところに来ている。国民的合意形成を図り、予算を配分することが不可欠だ。また、最近、若い世代に「婚活」と呼ばれる積極的な動きが出てきたことは悪くはない。こうした動きを支援することも重要だ。

 ---間に合うでしょうか。

 佐藤 六月発表になった二〇〇八年の合計特殊出生率は一・三七と二年連続でわずかながら上向いたが、再び景気が悪くなっており、先行きは分からない。ただ、一・三七という水準はフランスを除く先進国の平均値一・七四?一・七五と比べても極端に低く、その意味で日本は「超少子化国」だと認識すべきだ。また、少子化対策とは「産めよ、育てよ」という政策ではなく、国民の普通の希望が実現できる当たり前の社会を取り戻す政策だと捉え直さなければならない。国民の結婚や出産に関する希望が実現すれば、出生率もおのずと一・七四前後に上昇する試算もある。

〈インタビュアー 編集部〉



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