巻頭インタビュー

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政権短命回避には
首相任期制も一策アンドリュー・ゴードン(ハーバード大学ライシャワー日本研究所所長)
2011年10月号 連載〈巻頭インタビュー〉

政権短命回避には<br>首相任期制も一策
アンドリュー・ゴードン
(ハーバード大学ライシャワー
日本研究所所長)

1952年米国ボストン生まれ。
84年ハーバード大学で博士号取得(歴史・東アジア言語専攻)。
デューク大学教授、ハーバード大歴史学教授、
同大エドウィン・O・ライシャワー日本研究所所長(98?2004年)、
同大歴史学部長を経て、今年から現職。

 

――日本の「新総理誕生」を世界はどうみていますか。


 ゴードン 当然、奇妙なことだと思っているに決まっている。五年間で六人目の首相とは、まさに驚異的といっていい。米国では今、日本の首相が誰なのか、覚えている人などいないだろう。英語表現にflavor of the month(世間の流行)という表現があるが、日本の首相こそまさに、流行(flavor of the"year")に成り下がっているのではないか。首相が頻繁に代わるということ自体が国益を大きく損なっていることに日本は早く気付くべきだ。
 メディアや世論もあまりに短気すぎる。日本のメディアは、世論の関心を引こうと、誰が首相になっても小さなスキャンダルを針小棒大に報道し、引きずり降ろそうとする。瑣末な話で政治を麻痺させる罪はきわめて重い。


 ――政権の短命化に歯止めをかける方法はないのでしょうか。


 ゴードン 誰がなっても結局短命ならば、逆にどんな政権でも一定期間続けさせるのも一策ではないか。ここまで短命政権が続けば、そうした考え方が出てくるのもきわめて自然なことだ。首相が無能であるなら代えた方がいいが、代わった首相が同じくらい無能であれば最悪で、それが日本の現状だ。ならば、ある程度無能でも長く居続ける方が、国益上の損失は小さいかもしれない。はじめは有能でなくても、永久に有能ではないということにはならない。ビル・クリントンもロナルド・レーガンも最初の二年間は決して有能とはいえなかったが、後半の二年間で彼らの政策の評価は高まった。日本と同じ議院内閣制であれば、後世の評価はなかっただろう。


――つまり日本は制度自体を変えたほうが良いということでしょうか。


 ゴードン 確かに、他国の大統領制のように首相職に一定の任期を導入するというのも一つの考え方ではあろう。現在の議院内閣制であれば、選挙を経なくても、首相の支持率が落ちたら代えればいいという発想に陥ってしまう。ならば、もはや任期制などで縛るしかない段階ではないか。首相の仕事を覚えるには時間がかかるのは当然で、経験のない民主党から首相を選出するなら、なおさらだ。


 ――首相制度の改変といった大胆な改革が日本で実現できるでしょうか。


 ゴードン 首相職に任期制を導入するには憲法自体の改正を伴うことになるが、今の日本の分裂した政治状況や混乱した国民がそうした硬派な議論に耐えうるかどうかは疑問だ。憲法改正議論をしようにも、日本の政党はイデオロギーや政策の明確な違いに沿っていない。それが政権短命化の直接的な原因でもある。任期制を導入しようにも、憲法改正議論などできる状態ではなかろう。だが、現行制度が続く限り、首相の頻繁な交代劇が続く可能性は常に残ることを忘れてはならない。


 ――果たしてこの混乱を収拾する道はあるのでしょうか。


 ゴードン この頻繁な首相の交代は日本に特有の現象で、それは日本の政局状況が議院内閣制を、「日本版」ともいえる半ば特殊なものにした結果だ。ドイツや英国を見れば分かるが、同じ議院内閣制の下でも、各党の行動原則が明確な政策に従っていれば、日本のような異様な事態は起こらない。要は政治家がいかに行動すべきかが最も根本的な問題なのだ。それが期待できない現状では、制度上何らかの縛りがなければ政治の混乱は回避できまい。

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