今後の日米同盟はどうあるべきか五百旗頭 真(防衛大学校長)
2009年8月号 連載〈巻頭インタビュー〉
---連の北朝鮮問題で防衛論議に関心が高まっています。
五百旗頭 日本としては、感情的に激語するのではなく、相手を封じる抑止力を静かに整える実効的対処を考えるべきだ。ミサイル防衛システムの導入決定からわずか五年余でここまで来たことを想起すべきだ。専守防衛政策を解除するかどうか、敵地攻撃能力を持つかどうか、それは日本国民の政治的決定の問題である。その答えが出るまでは、日米同盟の拡大抑止力に依存せざるを得ない。
---その日米同盟は近年、希薄化が指摘されています。
五百旗頭 中国、インドなど新しい力の勃興により、国際政治は構造的に多元化している。それを日米同盟の相対化もしくは希薄化と捉える人もいる。日本も米国も今では東アジア問題について日米同盟基軸だけでは対処できない。中国を併用せざるを得ない。しかし、米中関係が世界秩序の中心になるから日米同盟を当てにしたら裏切られるだけだ、と思うなら日本は自己破滅の道を歩むことになろう。北朝鮮にさえ抑止力を持てない日本にとって、日米同盟は生命線だ。日米同盟の信頼性を疑う声も一部にはあるが、それは間違いだ。米国にとっても日本の価値は計り知れないことを知るべきだ。
---今後、日米同盟の相対的価値を高めることはできますか。
五百旗頭 中国は対米関係を最重視しているが、同時に上海協力機構など対米共同戦線の構築にも余念がない。米国も中国を世界秩序に組み込もうとしているが、中国のアフリカでの振る舞いや、チベット、ウイグルの問題を見ても、心から仲良くできるとは言いがたい。つまり、米中は協調と対抗の二重ゲームを展開しており、その双方について米国には日本への期待がある。例えば対抗面では、冷戦期にソ連に発揮した日本の対潜水艦能力などを、今後は中国の太平洋進出に対し発揮することを米国は期待している。
---今後の日米同盟はどうあるべきでしょうか。
五百旗頭 これまで日米同盟は幾つもの波乱に見舞われてきた。それに比べたら、今は「凪」の状態で、大きな懸案は少ない。それが「成熟」なのか、「空洞化」なのか、今後のやり方次第だ。一つの懸念は、仮に政権交代が生じたときに、外交安全保障政策で不用意な転換をすることだ。民主党の持論であったインド洋での給油活動停止、ホストネーションサポートの削減、地位協定の見直しなどを強行すれば同盟は冷え込み、結果、日本は自前で北朝鮮などすべての脅威に備えねばならなくなる。国際的連携を捨て、単独防衛の道を進むならば、現在の八倍以上の軍事費が必要になろう。どの政権であれ、その重さを自覚する必要がある。
---米国では日本の政治不安へも懸念が高まっているようです。
五百旗頭 J・ナイ発言など「民主党政権」の外交安全保障を不安視する向きもある中、七月二十九日の発言で鳩山代表は改めて党の持論を強調した。とにかくどの党が政権に就こうと、日本の地政的条件ゆえに捨ててはならない安全保障上の国益がある。国内的な受けを狙ってそれを見失えば、結局は国民を不幸にする結果となる。中国だけでなく、日本以外のすべての周辺国が軍事費を増大している。国際的連携を重視しながら、日本の自助能力も高めねばならない状況を直視すべきだ。
五百旗頭 日本としては、感情的に激語するのではなく、相手を封じる抑止力を静かに整える実効的対処を考えるべきだ。ミサイル防衛システムの導入決定からわずか五年余でここまで来たことを想起すべきだ。専守防衛政策を解除するかどうか、敵地攻撃能力を持つかどうか、それは日本国民の政治的決定の問題である。その答えが出るまでは、日米同盟の拡大抑止力に依存せざるを得ない。
---その日米同盟は近年、希薄化が指摘されています。
五百旗頭 中国、インドなど新しい力の勃興により、国際政治は構造的に多元化している。それを日米同盟の相対化もしくは希薄化と捉える人もいる。日本も米国も今では東アジア問題について日米同盟基軸だけでは対処できない。中国を併用せざるを得ない。しかし、米中関係が世界秩序の中心になるから日米同盟を当てにしたら裏切られるだけだ、と思うなら日本は自己破滅の道を歩むことになろう。北朝鮮にさえ抑止力を持てない日本にとって、日米同盟は生命線だ。日米同盟の信頼性を疑う声も一部にはあるが、それは間違いだ。米国にとっても日本の価値は計り知れないことを知るべきだ。
---今後、日米同盟の相対的価値を高めることはできますか。
五百旗頭 中国は対米関係を最重視しているが、同時に上海協力機構など対米共同戦線の構築にも余念がない。米国も中国を世界秩序に組み込もうとしているが、中国のアフリカでの振る舞いや、チベット、ウイグルの問題を見ても、心から仲良くできるとは言いがたい。つまり、米中は協調と対抗の二重ゲームを展開しており、その双方について米国には日本への期待がある。例えば対抗面では、冷戦期にソ連に発揮した日本の対潜水艦能力などを、今後は中国の太平洋進出に対し発揮することを米国は期待している。
---今後の日米同盟はどうあるべきでしょうか。
五百旗頭 これまで日米同盟は幾つもの波乱に見舞われてきた。それに比べたら、今は「凪」の状態で、大きな懸案は少ない。それが「成熟」なのか、「空洞化」なのか、今後のやり方次第だ。一つの懸念は、仮に政権交代が生じたときに、外交安全保障政策で不用意な転換をすることだ。民主党の持論であったインド洋での給油活動停止、ホストネーションサポートの削減、地位協定の見直しなどを強行すれば同盟は冷え込み、結果、日本は自前で北朝鮮などすべての脅威に備えねばならなくなる。国際的連携を捨て、単独防衛の道を進むならば、現在の八倍以上の軍事費が必要になろう。どの政権であれ、その重さを自覚する必要がある。
---米国では日本の政治不安へも懸念が高まっているようです。
五百旗頭 J・ナイ発言など「民主党政権」の外交安全保障を不安視する向きもある中、七月二十九日の発言で鳩山代表は改めて党の持論を強調した。とにかくどの党が政権に就こうと、日本の地政的条件ゆえに捨ててはならない安全保障上の国益がある。国内的な受けを狙ってそれを見失えば、結局は国民を不幸にする結果となる。中国だけでなく、日本以外のすべての周辺国が軍事費を増大している。国際的連携を重視しながら、日本の自助能力も高めねばならない状況を直視すべきだ。
〈インタビュアー 編集部〉

















